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管理栄養士コラム

2017.03.04 離乳食に関するお悩み~食物アレルギーについて~

あたたかい陽気の日も少しずつ増え、春の訪れを感じられる時期になりました。寒暖差も大きい時期でもありますので、運動・栄養・睡眠をしっかりとって、元気に過ごしましょう。

さて今回は、離乳食とアレルギーに関する話題です。最近、乳幼児のお子様を持つ保護者の方に、食生活全般に関するお話をする機会があったのですが、その中で、多くの方が気にかけている内容が"お子様の離乳食とアレルギーについて"でした。私が小学生だった30年前は、遠足等での友達どうしのおやつ交換は恒例だったような記憶(古めかしい記憶ですが…)がありますが、現在はお子様の食物アレルギーに対する配慮から、おやつの交換は禁止する対策を学校でもとっているようです。

近年では、鼻炎・喘息等のアレルギーの病気で苦しむ方が増えている背景もあり、お子様の食物アレルギーを心配する保護者の方が多いのも納得です。よく耳にする話題としては、たとえば、離乳食を始めるタイミングとして、「離乳食を早く始めると食物アレルギーになりやすい」と考えている方も多いようで(一時期、さかんに言われた俗説ですね)、一般的にアレルギーを起こしやすいとされる、卵や牛乳・乳製品、ナッツを与える時期を遅らせる傾向にあるようです。また、これから生まれてくるお子様の食物アレルギー発症を心配して、「妊娠中から特定の食物(牛乳や卵等)を食べない」という妊婦さんもいるようです。しかし、最近では、「離乳食の開始を遅らせる」または「特定の食物を除去」したとしても、食物アレルギーの発症を予防できない1)2)ことが明らかにされています。また英国の乳児640名を対象としたピーナッツアレルギーに関する研究3)では、むしろ除去食群(ピーナッツ摂取を回避していた群)より、除去食にしない群(ピーナッツを摂取する群)においてアレルギー発症頻度が有意に低下した、という結果が示されています。

食物アレルギーは、簡単にいうと食べ物に含まれるたんぱく質に対して、からだの免疫システムが過剰な反応を起こした状態です。理論上は、どんな食べ物でもアレルギーになる可能性があるので、離乳食で与える食べ物によるアレルギーをすべて事前に回避する方策はない(口にする食べ物すべてを事前にアレルギー検査することは実質的には難しい)、と言っても過言ではないのです。

このことを前提とした離乳食の進め方のポイントは、アレルギーの起こしにくい食べ物(いも類、野菜、コメなど)から、量はまず一口から始める、そして何も症状がなく食べることができた食べ物は、徐々に食べる量を増やしていくと良いでしょう。

そうはいっても、お子様のためにできる限りのことをして、食物アレルギーを防ぎたい!と考えるのが保護者の方の心情かと思います。アレルギーへの不安が強くて離乳食を開始できない場合は、アレルギーの起こしやすい食物(卵や牛乳・乳製品)について、8か月頃を目安に血液検査を行い、この結果を参考に与え始めると保護者の方も安心かもしれません。ただ、血液検査では"アレルギーあり"の結果でも、食べても症状が出ないこともありますし、"アレルギーなし"という結果でも症状が出る場合もあり、症状と結果が一致しない場合もよくあることなので、お子様の症状(機嫌が悪い、嘔吐や下痢、湿疹など)に注意しながら、少量ずつ始めることが大切です。

このように実際には、まずは食べてみないとわからないことが多いので、お子様の成長のためにも、食事制限は最小限にとどめられれば良いですね。極端な健康志向ではなく、ご家庭で食事を楽しくできる環境を作ることも大切です。頭でっかちになり過ぎず、食べることを楽しめたら良いですね。

【参考資料】
1) ESPGHAN: European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition
2) JPGFA: Japanese Pediatric Guideline for Food Allergy
3) Du Toit G, Roberts G, Sayre PH, Bahnson HT, Radulovic S, Santos AF, Brough HA, Phippard D, Basting M, Feeney M, Turcanu V, Sever ML, Gomez Lorenzo M, Plaut M, Lack G; LEAP Study Team.. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015;372(9):803-13.

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