
皆さんは、一日のうち、どのくらいの時間を座って過ごしているでしょうか。仕事でパソコンに向かう時間、テレビやスマートフォンを見る時間、車や電車で移動する時間など、私たちは日常生活のさまざまな場面で座っています。笹川スポーツ財団が2024年に日本全国の18歳以上の男女3,000人を対象に実施した調査1)では、座って過ごす時間は1日平均約5.5時間と報告されています。
健康づくりというと、ウォーキングやランニング、スポーツクラブでのトレーニングなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年では、運動する時間だけでなく、日常生活で「座っている時間」が健康に及ぼす影響にも注目が集まっています。
■ ジムやスポーツクラブで運動していても、座りすぎには注意が必要?
座ったり、横になったりしている状態で、エネルギー消費が少ない行動を「座位行動」といいます2)。座ってテレビを見る、パソコンを使う、読書をするなど、座ったり横になったりした姿勢で、ほとんど身体を動かさずに過ごすことが「座位行動」にあたりますが、睡眠は含まれません。ここで知っておきたいのは、運動不足と座りすぎは、必ずしも同じではないということです。例えば、週に数回スポーツクラブで運動していても、それ以外の時間はデスクワークやテレビ視聴などで長時間座っている方もいるでしょう。
これまでの研究では、座っている時間が長い人ほど、2型糖尿病や心臓・血管の病気にかかるリスク、さらには死亡リスクが高くなる傾向が報告されています3)。また、普段の運動量を考慮しても、座っている時間の長さと、こうした健康リスクとの間には関連がみられています4)。一方で、十分に身体を動かしている人では、長時間座ることに伴う死亡リスクの上昇が小さくなる可能性も示されています5)。
つまり、スポーツクラブなどで運動することは健康づくりに大切であり、それに加えて、日常生活でも長時間座り続けないよう意識することが重要と考えられます。
■ 座りっぱなしを中断すると、身体にどんな変化が?
では、座っている時間の合間に、どのように身体を動かすとよいのでしょうか。近年、長時間座り続けた場合と、途中で短時間の身体活動を取り入れた場合を比較し、血糖値などへの影響を検討した研究が報告されています。複数の研究結果を総合的に検討した報告6)によると、20〜30分ごとに2分間以上の歩行などの軽い身体活動を取り入れることで、座り続けた場合と比べて、食後の血糖値や血中インスリン濃度の上昇が抑えられることが示されています。ただし、こうした短時間の身体活動が、長期的な病気の予防にどの程度つながるのかについては、まだ十分に明らかになっていません。
ここで大切なのは、長時間座り続けないことだと考えられています。日常生活の中で、立ち上がったり、少し歩いたりする機会を意識して増やしてみる、例えば、仕事や家事、テレビを見る時間など、日常生活のちょっとした合間に立ち上がったり、歩いたりすることから始めてみると良いでしょう。
■ 日常生活の中で、できることから
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」7)でも、成人・高齢者ともに、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することが推奨されています。また、子どもについても、特に余暇のスクリーンタイムを減らすことが勧められています。
では、日常生活の中で座りすぎの時間を減らすために、私たちはどのような工夫ができるでしょうか。
■ 大切なのは、一日を通じて身体を動かすこと
皆さんは今日、どのくらいの時間を座って過ごしたでしょうか。健康づくりの機会は、スポーツクラブにいる時間だけではありません。これまでの運動習慣を大切にしながら、普段の生活でも座りっぱなしを減らし、身体を動かす機会を増やしてみましょう。
運動する時間と、運動していない時間。その両方に目を向けることが、より健康的な生活への第一歩になるのではないでしょうか。
参考文献
1. 笹川スポーツ財団. スポーツライフ・データ2024 スポーツライフに関する調査報告書;The 2024 SSF National Sports-Life Survey Executive Summary December 2024, Japan (https://www.ssf.or.jp/en/files/sld2024_e.pdf), 2024.
2. Tremblay MS, Aubert S, Barnes JD, et al. Sedentary Behavior Research Network (SBRN) – Terminology Consensus Project process and outcome. Int J Behav Nutr Phys Act. 14(1):75, 2017.
3. Wilmot EG, Edwardson CL, Achana FA, et al. Sedentary time in adults and the association with diabetes, cardiovascular disease and death: systematic review and meta-analysis. Diabetologia. 55(11):2895–2905, 2012.
4. Biswas A, Oh PI, Faulkner GE, et al. Sedentary time and its association with risk for disease incidence, mortality, and hospitalization in adults: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med. 162(2):123–132, 2015.
5. Ekelund U, Tarp J, Fagerland MW, et al. Joint associations of accelerometer-measured physical activity and sedentary time with all-cause mortality: a harmonised meta-analysis in more than 44 000 middle-aged and older individuals. Br J Sports Med. 54(24):1499–1506, 2020.
6. Quan M, Xun P, Wu H, et al. Effects of interrupting prolonged sitting on postprandial glycemia and insulin responses: A network meta-analysis. J Sport Health Sci. 10(4):419–429, 2021.
7. 厚生労働省.健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.(https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf ), 2023.