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管理栄養士コラム

2026.07.06 妊娠前・妊娠期の身体活動・運動について(2)

前回のコラムで、妊娠中の運動の有用性ついて触れました。妊娠中の運動の利点としては、妊婦の体重管理、腰痛、倦怠感、浮腫などのマイナートラブルの軽減や、精神的ストレス解消、そして分娩時間の短縮、帝王切開率の低下に加え、新生児合併症のリスクを低減し、健康効果が期待できることが報告されています。

「身体を動かそう」と考える場合、ウォーキングやランニングなどの活発な動きを想像するかもしれませんが、庭仕事や家事なども含めて、安静にしている時よりもエネルギーを消費する動作は「身体活動」と呼ばれており、さまざまな健康効果があることが明らかになっています。そうなんです、ふだん何気なく必要に迫られて(?!)我々が行っている掃除や料理、買い物などの家事全般は立派な有酸素運動になり、家事の積み重ねは健康づくりに大きく貢献しているのです。一方で、成人は起きている時間のおよそ60%は座位行動と言われており、座り続けることで健康障害が引き起こされることが明らかにされており1)、WHOの「身体活動・座位行動ガイドライン」2)では、妊婦・授乳婦においても、座位行動を少しでも減らして活動的になることが推奨されています。座位行動とは、座位や臥位(体を横にした寝た状態)で行われる、エネルギー消費が1.5メッツ以下の全ての覚醒中の行動で、例えばデスクワークをすることや、座ったり寝ころんだりした状態でテレビやスマートフォンを見ることが該当します。日本人の座位時間は、国際的にみても長い傾向にあることから、長時間にわたる座位行動をできるだけ少なくし、生活の様々な場面において身体を動かすことを意識する、例えば1時間に1回は立ち上がる、または軽いストレッチを行うなど、座りっぱなしの時間を減らし、家の中でも意識して身体を動かすことが重要と考えられています。

さて、妊娠中の運動実施の注意点について話を移していきましょう。妊婦さんの運動においては、母児の安全を十分に配慮する必要があることから、妊婦スポーツ実施における母児の条件について簡単に概説したいと思います。

妊娠期の運動で特に注意すべき事項は、子宮収縮の誘発と子宮胎盤血流量の減少であるとことから、現在の妊娠経過が正常であることが運動実施の基本的な条件になります。さらに、①後期流産・早産の既往がないこと②心疾患などの偶発合併症や、切迫早産、妊娠高血圧症候群などの産科合併症がないこと③単胎妊娠で胎児の発育に異常が認められないことが、妊婦スポーツ実施の条件として挙げられています3)。なお、妊娠前から習慣的に行っていた運動は、運動強度を遵守すれば継続可能とされている一方、妊娠成立後に新たに運動を開始する場合は、原則妊娠12週以降とされています。これは妊娠12週未満において、自然流産のリスクが懸念されるためです。またスポーツの終了時期は、妊娠経過が順調であれば特に制限しませんが、産科主治医の診察やスポーツ実施時のメディカルチェックによって、異常を認めないことを条件に継続可能とされています。妊婦さん本人も体調の変化には十分に注意し、運動中に体調不良が生じたら、ただちに運動を中止し、主治医に連絡するようにしましょう。

続いて望ましい運動種目と実施時間についてです。妊娠中に行う運動としては有酸素運動、かつ全身運動で楽しく長続きするものが好ましく、望ましいスポーツの代表的な運動種目としては、ウォーキング、ダンス、水泳、水中エクササイズ等が挙げられます。一方、有酸素運動であっても、レスリングのような腹部へ過度な衝撃が加わるスポーツ、サッカーやホッケーのような他の選手や周囲と激しい接触による外傷の危険性が高いスポーツでは、胎盤早期剥離や切迫流早産等のリスクが高まる可能性があるため、控えるべきでしょう。

運動強度としては、心拍数で150bpm以下、自覚的運動強度(運動がどれほどきついか、自分の感覚で表したもの)としては、「ややきつい」以下が望ましいとされています3)。またスポーツを実施する時間帯については、子宮収縮出現頻度が少ないとされる、午前10時から午後2時頃が望ましい時間帯と考えられています。運動時間については、日本臨床スポーツ医学会の「妊婦スポーツの安全管理基準」3)では、運動習慣の少ない妊産婦は、週2-3回で、1回の運動時間は60分以内を目安とすることが望ましいとされているので、参考にすると良いでしょう。

妊娠中の運動は、「無理をして頑張る」ものではなく、ご自身の体調や妊娠経過に合わせて、安全に身体を動かすことが大切です。妊娠経過が順調であれば、主治医と相談しながらウォーキングや水中運動などの適度な運動を楽しむことができます。また、特別なスポーツを始めなくても、毎日の家事や散歩など、日常生活の中でこまめに身体を動かすことも、妊娠中の健康づくりにつながります。「座りっぱなし」の時間を少し減らし、できることから身体活動を取り入れながら、健やかなマタニティライフを過ごしていただければと思います。


参考文献
1. Sagelv EH, et al. Device-measured physical activity, sedentary time, and risk of all-cause mortality: an individual participant data analysis of four prospective cohort studies. Br J Sports Med. 57(22):1457-1463, 2023.

2. 「要約版 WHO身体活動・座位行動ガイドライン(日本語版)」,日本運動疫学会ほか

3. 日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会:妊婦スポーツの安全管理基準(2019). 日本臨床スポーツ医学会誌2020; 28:213-219.

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