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ジュニアフィットネスコース管理栄養士コラム

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2011年以降

今回は、食べ方と太りやすさの話題です。「ゆっくりとよく噛んで食べることは健康に良い」ということは、古くから言い伝えられてきましたが、岡山大学森田教授の研究グループが大学生1300名を3年間追跡した調査(縦断研究)により、「早食いの習慣がある人は肥満になりやすい」ことが立証されました。研究グループは、「食事が不規則」「朝食を抜く」など12項目について質問し、「早食いだ」と答えた人はそうでない人より4.4倍肥満しやすいことを明らかにしました。

ゆっくりとよく噛むことは、肥満対策における行動療法のひとつとして「肥満治療ガイドライン」の中でも位置づけられ、1口20〜30回以上噛むことも推奨されており、「咀嚼法」と呼ばれています。今回の調査結果から、早期に早食いを是正することで、将来の肥満予防につながることが期待されますが、歯を失うと「噛めない」状態になることから、高齢者においては歯の健康にも配慮することが大切です。日本人の場合、加齢に伴って肥満になりやすい傾向にあり、「早食い」の是正に加えて、「よく噛める歯を維持すること」も、肥満およびメタボ予防を講じる上で重要と考えられます。厚生労働省の検討会では、よく噛む健康づくりとして「ひとくち30回以上噛む」ことを奨める「噛ミング30:かみんぐさんまる」という運動を提唱しています。適切な体重管理には、「食べる量やバランス」に加えて、「ゆっくりよく噛んで食べる」といった「食べ方」も重要な要因のひとつと言えそうです。

*Relationship between eating quickly and weight gain in Japanese university students : A longitudinal Study. Yamane M, et al. Obesity (Silver Spring), in press.

暑かった夏が終わり、食欲の秋が到来です。前回は夏バテ解消のお話をしましたが、暑さが終わり涼しくなってくると、食欲が倍増して体重が増えてしまう、ということもあるかもしれません。食べ過ぎにはもちろん注意ですが、健康(または健康的な体重)を維持するには運動習慣を身につけることが大切です。気候的に過ごしやすい秋は、運動をはじめる良い時期です。からだを動かしてみませんか。まず手軽な方法として、「歩く」習慣をつけることをおすすめします。

ではどの程度歩けば良いのか?という疑問がわきあがってきます。生活習慣病予防の観点から策定された「健康日本21」では、1日に男性9,200歩、女性8,300歩という目標が掲げられています。一方、平成24年度の国民健康・栄養調査の結果によると、1日の平均歩数は男性7,139歩、女性6,257歩と男女ともに目標に2000歩も足りないのが現状です。まずは1日に自分がどれくらい歩いているのかを知ることが大切ですから、歩数計を着けてはかってみると良いでしょう。

通勤はもちろん、近所のコンビニへ行くのも車で移動、という方もいらっしゃるかと思いますが、まずは徒歩で行く、はじめはそれが難しければ買い物の際に車を駐車する場所をできるだけお店から遠い場所に停める、駅や建物内での移動の際はエスカレータ等ではなく階段を利用するなど、少しの距離であっても「歩く」ことを習慣づけることが大切です。便利な現代社会で健康を守るためには、「何を食べるか」を気にするのと同じように、「何で移動するか」にも気を配った生活を実行することが大切だと思われます。

今年の夏は昨年同様、気温が高い日が多いことに加え、関東でも急な大雨や落雷、雹が降るなど異常気象が続いております。気候が不安定なため、体調を崩される方もいらっしゃると思いますが、体調管理の要(カナメ)は適切な休養・栄養・睡眠が欠かせません。そこで今回は、夏バテ解消・疲労回復に効果的な栄養(野菜)のお話をいたします。

例えば夏のビールのお供として長年愛されている枝豆は、たんぱく質、ビタミン(B1、B2、C)、カルシウム、葉酸が豊富に含まれており、疲労回復に加え、貧血予防などに効果があります。この豊富なビタミン類とたんぱく質が、アルコール分解を促進し、肝臓への負担を軽減することから、ビールのおともにはベストパートナーと言えるわけです。また、中華料理店でおなじみの中国野菜である空芯菜(クウシンサイ)には、ビタミン(C、カロテンなど)や鉄、カリウムなどのミネラル類が豊富で、日本人が不足しやすい栄養素のひとつである「鉄」は、ほうれん草の約2倍含まれており、夏バテ予防・疲労回復に効果的です。中華料理店で「青菜炒め」をオーダーすると、空芯菜の油炒めが提供されることが多く、私も大好きなメニューのひとつですが、空芯菜は最近では手軽にスーパーでも購入することが可能です。軽く炒めたにんにくに、空芯菜を加えてサッと炒め、塩コショウや中華スープのモトで味付ければ、あの「青菜炒め」の味が再現することができます。これに疲労回復に効果的なビタミンB1を豊富に含む豚肉を加えれば、さらに美味しくバランス良好です。簡単にできる一品ですので、ぜひお試しください。

近年、お口の中の衛生状態と糖尿病、動脈硬化症といった全身疾患との間には密接な関係があると考えられており、歯周病はこれらの疾患の危険因子となることがわかってきました。歯周病とは、歯と歯茎の境目に歯垢がたまり、その中の細菌によって歯肉に炎症を引き起こす炎症性疾患で、歯を失う原因のひとつとされています。これまでの調査において、糖尿病の人は健常者と比較して歯周病の罹患率が高く、より重症化していること、歯周病有病者では糖尿病の有病率や発症リスクが高いこと、また歯周病有病者では心筋梗塞発症率が高いことなどが指摘されています。つまり歯周病は、歯を失う原因となるばかりでなく、全身の健康状態に悪影響を及ぼす可能性が考えられているのです。

最新の研究では、歯周病の原因となる細菌をのみ込むと腸内細菌が変化して様々な臓器や組織に炎症を起こすことが、新潟大大学院医歯学総合研究科の研究チームによって明らかにされており、口腔内の衛生・健康状態を保つことが、ひいては全身の健康につながることを裏付ける結果として注目されています。日頃CMなどでもよく耳にする「プラーク」とは歯垢のことで、「プラークコントロール」とは歯に付着した歯垢量を減らすことです。歯を磨くことや歯石の除去だけでなく、規則正しい食生活や繊維質のものをよく噛んで食べることもプラークコントロールのひとつと言われています。規則正しい食生活の励行と口腔内の衛生管理は、メタボリックシンドロームなどの発症を予防しうる有用な方法のひとつとなりそうです。

参考:読売新聞6月18日
http://www.m3.com/news/GENERAL/2014/06/18/225625/?portalId=mailmag&mmp=MD140618&mc

今月は皆さんよくご存じのメタボリックシンドローム(通称メタボ)について考えてみたいと思います。近年、メタボ対策をうたった飲食物が多く販売されており、特に飲料系の売り上げは好調のようです。これは健康を意識する方が増え、多くの方が簡単に、そして手軽にメタボ対策をしたいと考えているからだと思います。しかし「メタボとはなんぞや」と問われた際に、正しく答えられる人は意外にも少ないものです。そこで今回は、メタボリックシンドロームの概念についておさらいしておきましょう

メタボリックシンドロームとは、内蔵脂肪型肥満に加えて高血糖、高血圧、脂質異常症のうち、いずれか2つ以上を併せ持った状態のことを言います。内蔵脂肪型肥満をベースにこれらの動脈硬化の危険因子が複数重なった人では、たとえそれぞれが軽度でも、危険因子の数が増えるごとに動脈硬化性疾患;特に心臓病や脳卒中といった命に関わる病気を発症する確立が急激に高まることが明らかになっており、わが国の中高年男性の2人に1人がメタボかその予備群の可能性があると考えられています。日本人を対象とした研究*では、「BMI≧25」「脂質代謝異常」「高血糖」「高血圧」、これらの危険因子の数が0のときの冠動脈疾患(心臓病・狭心症など)の発症率を1.0とした場合、危険因子が1つの場合は5.09倍、2つの場合は9.70倍、3?4つの場合は31.34倍と、危険因子のひとつひとつが軽度であっても、重複する度合いに応じて発症率が急激に上昇することが報告されています。

メタボを予防・改善するためには、メタボのベースとなっている内臓脂肪を減らすことが重要です。内蔵脂肪は、食べ過ぎを是正し、運動習慣を持つなど生活習慣全般を改善することで減らすことが可能です。また、メタボを含めた疾病予防・治療に取り組む上で、腸内細菌叢へのアプローチが重要であることは前回ご紹介しましたが、健全な腸内細菌叢を保つには、魚や豆類を主体とし、野菜を含め様々な食材を少しずつ摂取する伝統的な和食が良いと言われています。予防法のひとつである食生活を見直してみませんか?

*Nakamura T, et al. Jpn Circ J 65(1):11-17, 2001

新年度を迎え、いっきに桜も満開となり春がやってきました。ご進級・ご入学おめでとうございます。分厚いコートを脱いで、軽やかにスポーツを楽しみましょう。さて今回は薄着の季節になるとちょっぴり気になる体重管理について。体重の増減は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスによって左右され、エネルギーの摂取量が消費量を慢性的に上回ると余ったエネルギーは脂肪として蓄積され、その結果体重は増加します。従ってエネルギー摂取量の制限(食べる量を少なく)と運動によるエネルギー消費量の向上がもっとも効果的な減量方法であることは、皆さんよくご存じのとおりです。しかし実際には、食事制限をしばらく継続すると基礎代謝が下がるため、食事制限をやめた途端にカラダは従来の食事量にも関わらず「食べ過ぎ」と認識するために、体重がもとに戻ってしまう(または増加する)いわゆる「リバウンド」が生じたり、運動によって活動量を増やすと食欲も増えて、思うように体重が減らなかったりと、理論上はシンプルに見える体重コントロールは、実際には複雑で難しいことは多くの方が経験済みかもしれません。

近年の研究では、肥満の人には特徴的な腸内細菌種が存在し、これが我々の生体におけるエネルギー代謝や太りやすさに大きく関与していることが明らかになりつつあります。腸内細菌とは、ヒトの腸内部に生息している細菌のことで、様々な菌が集まって複雑な微生物生態系を構築しています(有名な善玉菌としてビフィズス菌、乳酸菌など)。この微生物群集を「腸内細菌叢」と呼んでいますが、腸内細菌叢を改善できる食品(プレバイオティクス)や特定の細菌株(プロバイオティクス)の摂取が肥満を予防・改善できることが報告されています。プレバイオティクスの説明は少々難しいのですが、野菜や果物に含まれるイヌリン型フラクタンなどの難消化性糖類で、摂取により腸内細菌叢の構成を変化させビフィズス菌を増加、体脂肪を低下させることが報告されています。専門家の間では、メタボを含めた疾病予防・治療に取り組む上で、腸内細菌叢へのアプローチは重要であると注目されています。その他にも肥満者では脂肪組織の「質」や熱産生機能が低下していることが報告されています。このように体重増減は様々な因子が複雑に絡み合って生じることから、適正な体重を維持する難しさが再認識されています。

サルコペニア肥満について

今年の冬は数十年ぶりの大雪に見舞われ、都内でも交通機関に支障が出るなど通勤通学の人々にも大きな影響が出ました。3月に入りましたが、まだ真冬の寒さが続き、春の訪れが待ち遠しいですね。冬はどうしてもあたたかい室内で過ごす時間が増え、運動量も少なくなりがちですが、薄着になる季節に向けて楽しく身体を動かしていきたいものです。今回は近年関心が高まっている「サルコペニア肥満」についてです。

「サルコペニア」とは、加齢に伴う筋肉の減弱を指し、これに肥満が加わった状態を「サルコペニア肥満」と言い、2009年に筑波大学の久野教授が論文で発表し注目を集めています。サルコペニア肥満かどうか判定するひとつの目安として、体重を身長(m)の二乗で割って算出する肥満度(BMI)が25以上の場合と、体重に占める筋肉の重さ(筋肉率)が男性で27.3%未満、女性なら22.0%未満であることが挙げられています。筋肉率は、市販の体組成計で計測することができますが、計測できない場合でも例えば片足で立って靴下が履けない、歩く速度が同世代の人より遅いといった場合は筋肉率が落ちている可能性があると言われています。サルコペニア肥満は筋力が低下しさらに脂肪がたまっていく状態なので、高血圧や糖尿病のリスクが高まり、また高齢者では転倒して寝たきりになるリスクも高まるため注意が必要です。対策として、ウォーキングやジョギングなど脂肪を燃焼させ代謝を高める有酸素運動や早歩きも効果的で、さらに筋力トレーニングを加えると筋肉がつきやすくなると言われています。脂肪を燃焼させるには、15?20分以上の有酸素運動が必要であることをよく耳にするかと思いますが、最初は時間にこだわらず気軽に始めることが大切です。例えば徒歩での移動の際は、意識して速く歩くことからはじめてみてはいかがでしょうか?

大人もこどもも朝食を食べよう!

今年の元旦は比較的暖かく、穏やかな陽気の年明けとなりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。今回は朝食摂取の意義について考えてみたいと思います。簡単に言えば子供から大人まで総じて「一日をしっかりとはたらくためのエネルギーを補う」ことがその目的と言えます。小中学生を対象とした調査では、朝食欠食児の学業成績は、調査科目(国・数・社・理・英)でいずれも朝食摂取量の減少に応じて悪くなることが知られています。体力やイライラ度と朝食摂取状況においても、朝食欠食による身体的・精神的な種々の悪影響が認められており、健康への悪影響が懸念されています。

平均的な日本人の食生活(朝昼晩の三食)の中では、朝食はもっとも栄養バランスが充実していないことが近年の調査で指摘されており、昼食・夕食でまとめて必要な栄養(特にエネルギー)を摂る傾向にあることが報告されています。朝食の摂取エネルギーは熱として発散されやすく、体内に蓄積されにくいことから、同じ総摂取エネルギー量でも朝食の栄養量を充実させ、夕食を減らす配分に変えることで、体重コントロールや血糖値を改善できることが示唆されています。実際に、日本人のエネルギー摂取量は、戦後すぐの昭和21年より現在の方が低いにも関わらず、肥満者の割合は増加していることからも、主食・主菜・副菜を揃えた栄養バランスの配慮に加えて、食事量と摂取(食事)する時刻も含めた総合的に適切な食生活について考えていくことが、今後の健康を維持する上で重要なポイントとなりそうです。

睡眠不足と糖尿病発症リスク
―健常若年者でも睡眠不足は将来の糖尿病発症リスク上昇に―

11月に入り、今年も残すところ1か月と少しですね。今年の夏は猛暑でしたが、ほっとする間もなく駆け足で季節は過ぎ、短い秋が終わりいよいよ寒い冬を迎えます。これからの季節は空気が乾燥し、風邪やインフルエンザに罹患しやすくなりますが、日ごろから手洗いうがいを励行し、そして元気に身体を動かすことで病気に負けないカラダを作っていきましょう。さて、今回は「若年者の睡眠不足と将来の糖尿病発症リスクとの関連」をテーマに興味深い研究結果をご紹介します。

若者(10代)の睡眠不足は、インスリン抵抗性(血糖抑制作用を有するインスリンが肝臓や筋肉などで正常に働かなくなった状態)を上昇させ、将来の糖尿病発症リスクを上昇させることが、米国ピッツバーグ大学の研究*で明らかにされました。この研究では、健常な米国人高校生245名を対象に、1週間の睡眠量とインスリン抵抗性を追跡したところ、睡眠時間の少なさはインスリン抵抗性の上昇と関連していることがわかりました(この関連は肥満や性別、ウエスト周囲径とは独立していた)。研究者らによると、「1晩に平均6時間の睡眠をとっている若者が、もう1時間多く睡眠時間をとった場合、インスリン抵抗性が9%改善することがわかった。」としており、若者の健康状態を改善させる因子のひとつとして、睡眠時間の増加が重要であることが示唆されました。

大人も子供も忙しい現代社会にあって、睡眠時間の確保は大きな課題ではありますが、若者においては将来の健康を守る上でも重要なポイントとも言えることから、睡眠時間のとりかた、一日の生活時間の在り方について見直す必要があるかもしれません。

*参考 Can teens’ lack of sleep lead to Diabetes? 2013.11.3

飲酒量多い女性、脳卒中発症リスク上昇

10月に入っても汗ばむような暑い日が続きましたね。まだまだ冷たいビールや冷たい飲み物が美味しいなぁ、と感じた方も多いと思います。今回は、女性における飲酒量と脳卒中発症リスクとの関係について、厚生労働省研究班がまとめた研究結果(Prev Med 2013, Ikehara S et al.)をご紹介いたします(男性においては、多量の飲酒が脳卒中の発症リスクを高めるとの調査結果は既に報告されていましたが、国内で女性を対象とした研究は初めて)。

この研究では、全国9か所の保健所管内に住む40歳〜69歳の健康な女性約4万7千人を対象に飲酒量と脳卒中などの発症との関係を平均17年間にわたり追跡調査、調査期間中に1846名が脳卒中を発症しました。 その結果、アルコールを月1〜3回の「時々飲む」とした人に比べ、1日平均日本酒なら1合以上2合未満、ビール大瓶なら1本以上2本未満に相当する飲酒量の人が脳卒中になるリスクは1.55倍、1日平均日本酒2合以上またはビール2本以上では2.30倍、それぞれ発症リスクが高いことがわかりました。この結果から研究グループは、「近年若い女性の間で飲酒量や頻度が増えているとされているが、健康維持のためには、1日に日本酒なら1合未満、ビールなら大瓶1本未満を心がけることが望ましい」としています。

ちなみに、中瓶1本のビールを代謝するのに約3時間かかると言われており、飲酒量が多いと翌日まで体内にアルコールが残り、体の不調を感じることになります。翌日にアルコールを残さず、健康的にお酒を楽しむためには、飲酒量にも気をつける必要がありそうです。わかってはいるんですがね・・・。皆様飲み過ぎにご注意を。

(参考: Alcohol consumption and risk of stroke and coronary heart disease among Japanese women: The Japan Public Health Center-based prospective study. Prev Med 2013, Ikehara S et al. 読売新聞 2013年10月3日)

生活習慣を整えて心身ともに若々しく

暑かった今年の夏も終わりに近づき、秋らしい涼しい日も増えてきました。みなさまお忙しい毎日とは思いますが、夏の疲れが出やすい時期ですので、できるだけ休息をとって身体の調子を整えていきましょう。今回は、「見た目の若々しさと身体機能の高さは関係がある」ことを発表した、特に女性の方にとっては興味深い研究内容の一部をご紹介いたします。

この研究(ポーラ化成工業)では、45歳〜55歳までの健康な女性を対象に身体機能(血管状態、血中酸化LDL濃度、口腔内免疫など)と見た目の関連性について調査を実施したところ、実年齢よりも3歳以上若く見られる人は、3歳以上老けてみられる人と比較して、血管の状態が良好で、動脈硬化などの血管障害を引き起こす血中の酸化LDLが低値であったことを確認しました。さらに、実年齢よりも8歳若く見られる人は、4歳老けて見られる人と比較すると安静時代謝量、口腔内免疫などの指標は良好の値を示し、肌状態についても実年齢よりも若く見られる人の細胞は保水能力等が高く、同年代と比べてシワができにくいことも確認した、としています。この結果から、日常生活の中で食事内容や運動、睡眠など生活習慣を整えて体内を健全な状態に保つことは、肌の美しさや見た目の若々しさを維持するための重要な因子である可能性が示唆されました。生活習慣の改善が心身の健康、さらには見た目の若々しさや美しさに直結するのであれば、ちょっとめんどうに思っていた食事バランスへの配慮や運動習慣の継続も、頑張って取り組めるキッカケにもなりそうですね。この研究の結果については、今年11月に開催される学会で発表予定です。

(参考;化学工業日報 2013年8月27日掲載)

ロコモティブシンドロームってなに?

現在日本では人口の高齢化が進むとともに、要介護(要支援)認定者数が急増しています。介護が必要になった主な原因として、5人に1人が「骨折・転倒」、「関節疾患」など運動器の障害が原因であることが明らかにされており、寝たきりにならないためには、運動器の障害を予防することが大切と考えられています。日本整形外科学会は、運動器の障害のために要介護となる危険の高い状態をロコモティブシンドローム(以下ロコモ)と定義し、近年国をあげてその予防対策に乗り出したところです。中でも「骨粗鬆症を予防し骨折リスクを低減する」ことは、ロコモ対策においても重要課題のひとつと言えます。

骨粗鬆症とは、骨量・骨強度の低下により骨の脆弱性が進み、そのために骨折の危険が増した状態を言い、骨折は骨粗鬆症の合併症のひとつと言われています。骨折の予防には、骨量の維持および筋力の増強(筋肉量の低下を抑える)が重要ですが、そのためには適正なエネルギー摂取と運動能力の維持による転倒防止が欠かせないポイントです。まさに食事と運動のバランスが重要なのです。特に低体重(低BMI)は骨密度を低下させ、骨折リスクを高める因子と言われていますが、エネルギー摂取量が不足すると、たんぱく質の利用効率が低下し骨量や筋肉量の低下を招くことから、食事からの「エネルギー摂取量」の確保は骨折予防の観点からも大切なのです。近年の若年女性においては、4人に1人が低体重であることが報告されていますが、若年女性の過度のダイエットは将来のロコモのリスクを高める可能性が懸念されています。エネルギーのほかCa、V.D、V.Kも骨の健康を守る上で重要です。

次号では各栄養素と骨の健康との関連についてご紹介します。

夏場の粉類の保管にご注意を
-高温多湿の環境下、小麦粉の中でダニが爆発的に増加-

気温が高く、蒸し蒸しした季節がやってきました。早くも夏バテ気味の方もいらっしゃるかもしれません。水分補給と睡眠、バランスの良い食事を心がけ、暑い夏を乗り切り、そして夏を楽しみましょう。さて今回は、ダニの経口摂取によるアレルギーについてのお話です。ダニの経口摂取?!と聞いてびっくりされる方も多いかもしれませんが、我々の食生活においてその機会は意外に多いようで、お好み焼きやホットケーキを食べた後に蕁麻疹や呼吸困難を来たす報告例が近年増えつつあります。これは小麦の中で増えたダニの経口摂取が原因とされていて、粉類や調味料などの貯蔵食品で繁殖するケナガコナダニなどが、開封済みの小麦粉やお好み焼き粉、ホットケーキミックスの中に侵入し、粉中で増えたことが原因と考えられています。ダニは高温多湿の環境下で繁殖力が高くなるため再発防止の対策として、粉類を早めに使いきること粉類は密閉した状態で冷蔵庫に保管することが重要と言われています。特に気温と湿度が上がる夏場は、ダニの繁殖力が高くなるため、粉類の保管に注意が必要です。粉類の保管方法に注意するとともに、使用期限が切れた粉類は、もったいないと思っても廃棄して使用しないことも重要です。

実は私も数年前にたこ焼喫食後に蕁麻疹を来たし、しかし当時は原因不明のまま症状がおさまるのを耐えた経験があります。皆様ご注意を。

参考;日経メディカルオンライン「お好み焼きでアナフィラキシー、原因は?」2013.7.2

生活習慣と平均寿命との関係

-野菜摂取・減塩・運動習慣など生活習慣全般が寿命延伸に影響大の可能性-

厚生労働省が5年ぶりに、都道府県別の平均寿命を公表しました。全国1位は男女とも長野県で、男性80.88歳、女性87.18歳で、女性は前回1位だった沖縄県を抜いての1位を獲得しました。長野県の平均寿命延伸の背景には、生活習慣の改善に因るところが大きいと言われています。かつて長野県は、塩味の濃い味噌汁、漬物、塩漬けにした魚を食べる食習慣が一般的だったことから、脳卒中に因る死亡率が高い県でした。このことを受け、地域で食生活の改善をはかる住民ボランティアによる“減塩活動”が始まり、だしのうまみを効かせて塩分を控えるなど減塩の秘訣を県民に浸透させ、県民の減塩化を成功させたと言われています。また長野県では、野菜摂取量が全国1位、歩数19位と健康維持に推奨される習慣が上位である一方、肥満40位、喫煙44位と健康に影響を及ぼすと考えられている行動もしくは因子が下位であったことから、運動を含む生活習慣全体の改善が、長野県の平均寿命延伸に好影響を与えたと考えられています。

一方で今回3位に順位を下げた前回1位(女性)の沖縄については、ファストフードや肉類摂取過剰など食の欧米化の影響を強く受けたものと考えられています。食の欧米化については、全国的に影響を受けている事柄ですが、毎日の食習慣(野菜の積極的摂取、減塩)に留意するとともに、運動習慣を身につけて、健康寿命の長い元気に長生きを目指したいものです。

参考;産経新聞、厚生労働省ホームページ;http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk10/

緑茶・コーヒー摂取で脳卒中発症リスク低減

-緑茶やコーヒーをよく飲む人は、飲まない人に比べて脳卒中になりにくい-

入学、進級シーズンを迎え、春めいてきました。ご入学、ご進級、おめでとうございます。今年は桜の開花が早く、入学式前に満開となったところも多かったですね。暖かくなり、気持ちよくスポーツを楽しめる時期となりましたので、積極的に身体を動かして、元気いっぱい新年度を迎えましょう。今回は、毎日飲んでいる方も多いであろう緑茶やコーヒー摂取と脳卒中発症リスクとの関連について、国立がん研究センターなどの研究チームによる研究結果(Stroke 2013. 3.14電子版発行)ついてご紹介いたします。

研究チームは、45歳〜74歳までの男女約8万2千人余りを対象に、緑茶・コーヒー摂取と脳卒中発症との関連について追跡調査しました。その結果、緑茶を全く飲まない群に比べ、毎日2〜3杯飲む群で脳卒中発症リスクが14%減少、毎日4杯以上飲む群で20%減少していました。また、コーヒーについては、全く飲まない群に比し、毎日1杯以上飲む群では、脳卒中発症リスクが20%減少し、さらに緑茶を1日に2杯以上またはコーヒーを1日に1杯以上摂取する群では、緑茶もコーヒーも飲まない群に比べると、循環器疾患、脳卒中、脳梗塞、脳出血の発症リスクが有意に低下しました。特に、脳出血については、緑茶とコーヒー摂取の相互作用がみられ、より低い発症リスクとなっていたことがわかりました。

緑茶に多く含まれるカテキンには、抗酸化作用、抗炎症作用、抗血栓作用など、複数の血管保護効果が見られること、コーヒーには、クロロゲン酸が豊富に含まれており、血糖値改善効果があると言われていることから、緑茶やコーヒーの摂取が脳卒中発症予防に効果があったのではないかとみられています。

清涼飲料水を毎日飲む女性-脳梗塞発症リスク1.8倍-

一年でもっとも寒さが厳しい時期となり、インフルエンザ流行のシーズンを迎えました。手洗いうがいの励行(感染予防)と、バランスの良い食事・十分な睡眠をとる(からだの抵抗力を高める)など、予防対策に努めましょう。今回は、糖分を含む飲料(清涼飲料水)摂取と脳梗塞発症との関連について検討した研究結果をご紹介します。

コーラやジュースなどの清涼飲料水をほぼ毎日飲む女性は、ほとんど飲まない女性と比べて脳梗塞になる危険性が1.8倍高いことが、約18年間に及ぶ国内約4万人の追跡調査データをもとにした大阪大学の研究グループ(公衆衛生学)の分析で明らかになりました(Am J Clin Nutr 96(6):1390-7. 2012)。この研究は、1990年に40-59歳だった男女3万9786人を対象に、生活習慣を調査、2008年まで追跡しました。脳梗塞になったのは1047人(男性670人、女性377人)。食事内容の聴取結果をもとに、コーラや果汁飲料など糖分を加えた清涼飲料水(果汁100%ジュースは除く)250ml程度を「ほぼ毎日飲む」、「週に3,4回」、「週に1,2回」、「ほとんど飲まない」の4グループに分類したところ、回数の多い女性ほど脳梗塞になるケースが増え、「ほぼ毎日飲む」群の発症率は「ほとんど飲まない」という人の1.83倍になっていました。男性ではこの傾向は見られなかったということです。研究チームは、「清涼飲料水の糖分が血液中の糖や中性脂肪の濃度を挙げて動脈硬化につながった可能性が考えられ、男性は女性より運動量が多くエネルギーとして代謝されやすいため、影響が出にくかったのでは」とみています。糖分を加えたカロリーのある飲料の習慣的飲用は、糖尿病や肥満などの生活習慣病も発症しやすくなります。清涼飲料水の飲み過ぎには注意しましょう。

酒席が多い季節-お酒とのつきあい方

12月に入り、忘年会、新年会など酒席が多い季節となりました。つい飲み過ぎてしまい、翌日に体の不調を感じたことがある方は少なくないと思います。今回は楽しくお酒とつきあうために、お酒を飲んだ後のアフターケアについて考えてみましょう。

お酒を飲んだ翌日に体調が悪くなる場合、お酒が代謝しきれていない可能性があります。中瓶1本のビールを代謝するのに約3時間かかると言われており、飲酒量が多かったり長時間飲酒し続ければ、翌日まで体内にアルコールが残り、体の不調を感じることになります。この場合は肝臓で代謝が進むのを待つしかないので、肝臓が働けるようにできれば寝て過ごすのが良いそうです。ところが、代謝が済んだ頃になっても不調を感じる場合は、体内の水分バランス乱れている可能性があります。飲酒後のどが渇くのは、酒で拡張した血管から水分が出てしまい、血管が脱水状態になっているからで、水分補給をしながら入浴などで汗をかくのが効果的です。最近では、お酒の代謝の助けとなるウコンを使ったドリンクも増えていますね。ウコンには胆汁分泌促進作用による肝臓保護作用があり、二日酔いの防止、改善のためのサプリンメントとして広く売られています。これを宴会の前に飲んで、肝臓をいたわる人も増えているようです。お酒と上手につきあって楽しい時間を!

寝る子は脳も育つ
-記憶にかかわる脳の「海馬」は睡眠時間が長い子でより大きい-

今年も残すところあとひと月余りとなりました。寒さが本格化し、空気も乾燥してくる時期ですので、手洗いうがいを励行しましょう。さて今回は子供の睡眠時間と脳の記憶を司る領域である「海馬」(*1)の体積との関係について、最近発表された研究結果をご紹介いたします。

これまでの研究において、睡眠時間の短い子供は記憶力が劣るという報告が複数ありました。今回研究成果をご紹介する東北大学の研究チームでは、2008年からの4年間で、健康な5〜18歳290人を対象に、平日の睡眠時間と、脳の記憶を司る領域である海馬の体積について調べました(*2)。その結果、睡眠時間が10時間以上の子供は6時間の子供より、海馬の体積が1割程度大きいことが判明し、また、睡眠時間を十分に取っている子供は、睡眠時間が短い子供に比べ、海馬の体積が大きいことが分かりました。海馬はストレスやうつ病、高齢者でのアルツハイマー病などでは体積が収縮している報告があり、今回の研究では、子供のうちに十分な睡眠をとる生活習慣をつけることは、健やかな脳の発達を促進する上で重要であることがわかりました。

上記研究の他にも、睡眠時間と健康との関連を検討した研究は多くあり、睡眠時間が短い子どもは肥満になりやすいことが報告されています。子どもの時の十分な睡眠時間の確保は、その後の人生における健康を維持する上でも重要な因子のひとつと考えられます。

(*1) 海馬; 海馬は大脳辺縁系の古皮質に属し、脳の記憶や空間学習能力に関与する部分を担っています。

(*2) 文献; Sleep duration during weekdays affects hippocampal gray matter volume in healthy children Neuroimage 2012, 60(1):471-475.

コーヒーの効能
-コーヒーポリフェノールの抗酸化作用-

秋も深まってまいりました。朝晩肌寒い日もありますが、日中は比較的過ごしやすく、スポーツの秋到来です。元気に身体を動かして、風邪やインフルエンザに負けない基礎体力を身につけたいですね。さて今回は、日常的に飲むコーヒーの効能について、近年明らかになりつつある健康効果についてご紹介いたします。

コーヒーと言えば、カフェインの持つ覚醒作用が有名ですが、コーヒー成分のひとつであるコーヒーポリフェノールの持つ抗酸化作用にも近年注目が集まっています。ポリフェノールは、赤ワインの成分として一躍その名が知られるようになりましたが、コーヒーには赤ワインと同程度、緑茶の約2倍のポリフェノールが含まれていて、抗酸化力が強く、体への吸収が高いことも近年明らかになってまいりました。ポリフェノールには、抗酸化作用や抗炎症作用がありますが、コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸類)には、インスリン感受性を改善し、小腸でのブドウ糖吸収を抑制する作用もあることがわかり、糖尿病発症予防に有効となる可能性が期待されています。また、コーヒーを習慣的に飲むことは、肝硬変、肝臓がんのリスクを低減することが多くの研究で明らかにされており、肝臓がんでは、コーヒーをほぼ毎日飲む人は男女とも発症リスクが約半分に減少することが報告されています。これは、コーヒーの持つ抗炎症作用が肝炎の進行を抑え、肝臓がんを予防している可能性が考えられており、肝臓病や糖尿病をはじめとする様々な疾患への予防効果が期待されています。

しかしコーヒーの飲み過ぎは、胃潰瘍や膀胱がんの発症リスクを高める可能性も指摘されており、極端な飲み過ぎ(10杯/日以上)はひかえたほうが良さそうです。

災害時に備える栄養と食事-水分・備蓄編-

9月は非常災害を考える月です。非常災害は誰もが身近な問題となっている今、命を守るために知っておきたい水分と備蓄についてご紹介いたします。


災害時は第一に水分をとることが最優先です。災害時は食事の量が少ないので、食事からの水分摂取が減ってしまうことに加え、汚れたトイレを敬遠するため、水分補給が少なくなりがちです。水分が不足すると起こりやすい症状として、脱水症、エコノミークラス症候群、便秘、心筋梗塞、脳梗塞などの慢性疾患が挙げられ、水分不足は命にかかわりますので、しっかり摂りましょう。(特に、妊婦さんはおなかの赤ちゃんのために、授乳中のお母さんは母乳や赤ちゃんのためにしっかり水分をとってください。)また、食物アレルギーのある人は災害時の食品の確保が難しく、慢性疾患の人も食事コントロールが必要ですから、特別な食品が必要な人ほど、いざという時のために、日頃から備蓄を心がけましょう。


特に用意(備蓄)しておきたいもの; 粉ミルク(ミルクを溶かす水、紙コップ、哺乳瓶など)、嚥下困難者用食品、食物アレルギー対応食品、病態用食品、濃厚流動食(これらは、行政の備蓄も少ないので準備を)特別用途食品、ビタミン強化米、カセットコンロなど

低炭水化物ダイエットにご注意を
-心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)発症リスク高まる-

暑い毎日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夏バテ、熱中症に注意をして、元気に夏を楽しみましょう。さて、今回は低炭水化物ダイエットと心血管疾患発症リスクとの関係について、先日発表された研究結果をご紹介いたします。


ダイエット法にはいろいろありますが、炭水化物の摂取量を減らし、たんぱく質を積極的に摂取する「低炭水化物高たんぱく質ダイエット」を長期間続けると、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)になる危険性が高まることが、ギリシャAthens大学などの研究で明らかになりました*。この研究グループでは、30-49歳のスウェーデンの女性4万人余りの食生活を調査、低炭水化物と高たんぱく質食が女性の心血管に及ぼす長期的な影響を16年間追跡、評価しました。心血管疾患を発症した1270症例を炭水化物とたんぱく質の摂取量によって10段階に分けて分析したところ、炭水化物が20g減少し、たんぱく質が5g増加するごとに発症リスクが5%上昇し、低炭水化物・高たんぱく質のグループでは、そうでないグループに比べて発症リスクが最大1.6倍高まることが明らかになりました。


一般的に炭水化物を制限する食事では高たんぱく質になる傾向があり、炭水化物を減らすダイエットは日本でも広く知られています。炭水化物の摂取量を減らすと、短期的には体重減少が見られますが、近年では心血管への悪影響を懸念する報告も散見され、また日本糖尿病学会が「極端な糖質制限は、健康被害をもたらす危険がある」との見解を示していることからも、注意が必要です。


(*参考Lagiou P, et al. Low carbohydrate-high protein diet and incidence of cardiovascular diseases in Swedish women: prospective cohort study. BMJ in press.)

暑い夏・・・熱中症対策について

楽しい夏休みをお過ごしでしょうか。今回は、熱中症に関する基本的な予防対策および注意点についてご紹介したいと思います。


熱中症とは、高温環境下で体内の水分や塩分が失われ、体内の調節機構が異常をきたし、体温の著しい上昇や筋肉の硬直(こむら返り)、意識障害などが生じる状態をいいます。熱中症は、炎天下の屋外で発症するものと思われがちですが、実は屋内での日常生活中に発症する例も少なくありません。日常生活中の発症が多いのは、主に高齢者の方で、年齢が上がるにつれて重症の症例が増加している一方で、年少者(特に小学校就学前のお子様)においても発症リスクが高いことがわかっています。屋内にいる時にも十分な注意が必要です。屋内では気温がゆっくりと上昇するうえ、室内でじっとしている時にだるさや頭痛、吐き気を感じても、それが熱中症によるものとは気づきにくく、そのまま高温化で長時間過ごしがちなことが原因となっているようです。


もし、実際に熱中症の人に遭遇した際、誰でもできる基本的な対処法は、できるだけ体温を下げることが重要です。冷却は、厚みのある服(特に作業用/運動選手用の防護服)、高湿度、発汗や汗の蒸発を妨げるものにより障害されるので、風通しの良い状態にし、扇風機を使うなどして汗の蒸発を促進させる、首や腋の下を冷却するほか、エアコンで部屋の温度と湿度を下げることも効果的です。意識がはっきりしている軽症の人の場合は、冷たい水分と電解質を補給し(スポーツドリンクなど)、安静にして様子を見ること、意識障害があるような重症な場合は、体を冷却しながら早急に医療機関を受診することが重要です。


熱中症を予防するために普段の生活の中で簡単にできる心がけとして、一日一回は暑さに身体を順応させ、その後体温をしっかり下げること、寝苦しい夜は首筋を冷やしたり、タイマーをセットしてエアコンをつけて寝ること、そして適度な水分補給が効果的です。最近では、ドラッグストアなどでも暑さ対策として、アイス枕や冷却ジェルシートなども販売されていますので、利用するのも良いと思います。熱中症対策をして、暑い夏を楽しく乗り切っていきましょう。

夜食とると代謝異常(メタボ)を引き起こす
-不規則な食生活は肝臓の「時計」(体内時計)に乱れ

蒸し暑い季節となってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。こまめに水分補給して、元気に夏を迎えましょう。さて、今回は夜食とメタボについてです。夜食など不規則な時間に食事をとると、膵臓から分泌されるインスリンの作用で、代謝で中心的な役割をする肝臓の「時計遺伝子(体内時計)」のリズムが乱れ、代謝異常を引き起こすことが、名古屋大学の研究グループによるラットの実験(英科学誌; Scientific Reports)で明らかになりました。この研究では、「時計遺伝子」にホタルの発光を担う酵素「ルシフェラーゼ」をつないで肝細胞を光らせて、肝細胞の光がどう発現するか、「時計遺伝子」の働きをリアルタイムで観察しました。ラットは夜行性のため、食事に適した夜間の「活動期」、日中の「休息期」のそれぞれの時間帯にインスリンを与え、肝臓への影響を調査した結果、「活動期」にインスリンを与えると「時計遺伝子」は正常な動きを示し、最適な代謝機能を維持できた一方、「休息期」では時計のリズムが狂い、代謝機能が下がることがわかりました。また、「活動期」の朝に食事をとると一旦乱れた時計も正常化されることが説明されました。現在日本では、エネルギー摂取が増加していないにもかかわらず、肥満・糖尿病が増加傾向にあることから、朝食の欠食をはじめとする不規則な食生活が原因のひとつと考えられてきました。この研究では乱れた食事のタイミングが代謝異常を引き起こすメカニズムを明らかにしたことから、研究グループでは「食事のタイミングを規則正しくすることで、メタボや生活習慣病予防が期待される」としています。

(参考Yamajuku D,,et al. Real-time monitoring in three-dimensional hepatocytes reveals that insulin acts as a synchronizer fir liver clock. Sci Rep. in press. 読売新聞;2012年)

若年女性のやせ過ぎと小さくなる赤ちゃん

肥満に起因する健康上の問題(生活習慣病の増加)が社会問題化し、小児から中高年に至るまで肥満対策が強化されてきた一方で、若年女性においてはやせ過ぎが深刻で、生理的に体重増加が求められる妊婦をも巻き込んで若年女性のやせ傾向が進んでいます。国レベルでこれほど顕著に若年女性のBMI(体格指数)が低下しているのは世界的にも稀で、妊娠・出産年齢にある日本人若年女性の栄養不良傾向が懸念されています。さらに近年、わが国では出生体重が2500g未満である低出生体重児出生率が上昇傾向にあり、その背景因子のひとつとして、母体体型のスリム化(やせ過ぎ)が指摘されています。

低出生体重児は将来、肥満や糖尿病、高血圧など生活習慣病発症リスクが増大することが、多くの疫学研究によって明らかにされており、母体のやせは本人の健康のみならず、次世代の健康へも強い影響力を持つことが示唆されています。このことから、妊娠前のやせ過ぎを未然に防ぎ、適正な体型を保つことが母児の健康を守る上で重要課題ですが、残念ながら妊娠前のやせ過ぎが生まれてくる子供の健康に大きな影響を及ぼすことは、広く知られていないのが現状です。

BMI(Body Mass Index)とは・・・体重(kg)/身長(m)2.

日本肥満学会が決めた判定基準では、統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI22を標準とし、18.5未満を低体重(やせ)、18.5以上25未満を普通体重、25以上を肥満としています。

食生活を見直して元気な新学期を!

あたたかい日が増え、春がやってきました。進級・進学おめでとうございます。今年度も元気で健康に過ごすためにも、食生活を見直してみましょう。

食生活の基本

@食事を抜かず、3食規則正しく食べる

Aご飯を中心にいろいろな食品を組み合わせて食べる(おかずに偏

C適度な運動をする(摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスをとる)

です。これらは、大人も子供も共通して重要な食習慣の基本です。

国民健康・栄養調査によれば、朝食欠食率は依然増加傾向にあることが報告されていますが、朝食の欠食は、脳のエネルギー源となるぶどう糖が供給されないため、集中力の低下や心身の不調の原因となることが知られています。毎日朝食を摂る子供ほど、学力テストの正答率や基礎的運動能力が高いことは、ご存じの方も多いことと思います。また、食事を抜いてしまうと、我々の体はエネルギーを蓄えようとする働きがあるため、太りやすくなることから、肥満を予防する上でも1日3食規則正しく食べることは重要です。朝食欠食者は、20歳代男女で最も高く約30%にのぼりますが、朝食欠食の習慣が始まったのは中高生頃からという人が多いと言われています。

幼少期から望ましい食習慣を形成し、身につけることが、生涯の心身の健康を維持する上でも重要です。忙しい朝でも朝食をしっかり摂って、脳と身体を目覚めさせ、元気いっぱいな一日をスタートさせましょう。

睡眠時間と糖尿病発症リスク

皆様は、1日にだいたい何時間くらい睡眠時間をとっていらっしゃいますか?質の良い睡眠(ぐっすりよく眠れる)がとれていらっしゃいますか?いやいやマンネン睡眠不足だよ、という方も多いのではないでしょうか?今回は睡眠時間と糖尿病発症リスクについて、糖尿病専門国際誌(Diabetes Care. 2012; 35(2):313-318)に掲載された日本の研究をご紹介いたします。

この研究では、2003年度(2003年4月〜2004年3月)に糖尿病ではない35-55歳の男女3,570人を対象に、睡眠時間や睡眠の満足度(睡眠の質)について調査しました。その結果、2007年度までの4年間に121人が糖尿病を発症、そのうち糖尿病家族歴がない(親や兄弟に糖尿病患者がいない)人において、睡眠時間が5時間以下の人は7時間を超える(>7時間)人と比べ、糖尿病発症リスクが5.37倍高いことが明らかとなりました。さらに、睡眠不足を感じている人は感じていない人より6.76倍、「夜中に目が覚めることが深刻な問題である」と答えた人は、そうでない人より5.03倍、それぞれ発症リスクが高いことがわかりました。

忙しくストレスフルな毎日を送っているであろう多くの現代人にとって、7時間超えの良質な睡眠を確保することは容易ではないかもしれませんが、糖尿病発症を予防する上で重要な因子であることが示唆されました。海外の研究では、睡眠時間が極端に長くても短くても、発症リスクが上昇することを報告しているものもあり、良質で適切な量の睡眠時間の確保は、糖尿病を予防する上で重要である可能性が考えられます。そして、良質な睡眠時間の確保は万病予防に通じることかもしれません。

紅茶の消費量が多いほど糖尿病有病率減少

今回は紅茶の摂取量と糖尿病発症との関連についてです。第21回世界糖尿病会議(2011年12月開催ドバイにて)で発表された興味深い研究結果についてご紹介いたします。

今回の研究は、ユーロモニター社が実施した国際貿易調査のデータを利用し、世界50カ国の一人当たりの紅茶の消費量を推定し、疾病の疫学データはWHOのデータを用い、5つの重要な疾患(がん、糖尿病、心血管疾患、感染症(結核、HIV)、糖尿病)発症との関連について検討しました。解析の結果、紅茶の一日の摂取量と糖尿病発症との関係が負の関係にあり、一日の紅茶摂取量が多い国ほど糖尿病発症率が低いことがわかりました(その他4つの疾患発症については、紅茶消費量との相関なし)。今回の研究結果では、紅茶の摂取量と糖尿病発症との因果関係については言及できませんが、動物モデルの研究では、紅茶の高血糖抑制作用が報告されています。また、紅茶に多く含まれるテアフラビンには腸管における糖吸収の抑制作用が、フラボノイドには抗肥満効果が報告されていることから、これらの成分を通じて糖尿病発症抑制に寄与した可能性が考えられています。ふだん何気なく飲んでいる嗜好品で(最近は脂肪燃焼効果をうたったお茶を意識的に飲んでいる方も増加中?)、健康効果があるのなら嬉しいものですね。

お肉の食べ過ぎと大腸がん発症リスク

今回は、お肉の食べ過ぎと大腸がん発症との関係についての話題。牛や豚の赤肉を多く食べる女性は、あまり食べない女性より、大腸がんの一つである結腸がんのリスクが4割以上高くなることが国立がん研究センターの追跡調査(Asia Pac J Clin Nutr.2011;20(4))でわかりました。研究チームは、岩手や長野、茨城など9県在住の45〜74才の男女80658人を対象に、1995年から2006年まで追跡。食習慣調査から1日の肉類摂取量を算出し、摂取量に応じて5グループに分類し、がん発症(調査期間中に結腸がん788人、直腸がん357人)との関係を検討しました。その結果、女性で牛肉や豚肉を1日の調理前の重量で約80グラム以上と最も多く食べるグループの結腸がん発症リスクは、25グラム未満と最も少ないグループの1.48倍に上りました。一方、男性では牛肉や豚肉だけでは摂取量とリスク上昇の関係は明確に表れなかったものの、鶏肉を加えた肉類全体の総摂取量が1日約100グラム以上と最も多いグループの結腸がん発症リスクは、35グラム未満と最も少ないグループの1.44倍に上昇していました。

牛や豚などの赤肉を食べると大腸がん発症リスクが上昇することは、これまで海外での調査結果が報告されており、世界がん研究基金の報告(2007年)では、牛や豚の肉は500gグラム/週までを推奨しています。今回の日本における大規模調査でもほぼ似たような結果となり、日本人においても裏付けられたことになりました。研究チームでは、「大腸がんのリスク因子として重要なのは飲酒と肥満だが、今回は最も多いグループだけでリスク上昇が見られたことから、食生活では肉類の過剰摂取を控えた方が良いと考えられる。ただ重要なのは肉類の摂取が即危険と考えるのではなく、食べ過ぎに注意すればいいのではないか」との見解を示しています。お肉やお魚、卵や大豆製品を上手に取り混ぜながら、毎日のお食事のバランスを注意することは、がん予防の上でも重要のようです。

魚を食べれば糖尿病予防
ただし男性のみ・・・女性は差なし

さて今回は魚のおはなし。魚をたくさん食べる男性は、あまり食べない男性に比べ糖尿病になるリスクが4分の1程度低くなる、という研究結果が、国立がん研究センターらの研究チームによって発表されました。

この研究は、全国の45歳から75歳の男女およそ5万人に魚介類を食べる頻度や量、種類をたずね、摂取量が少ない人から順番に並べ4群に分類、その後5年間中に糖尿病と診断された人の割合に違いがあるかを分析しました。追跡調査の結果、糖尿病になるリスクは、男性では最も摂取量が多いグループ(摂取量171.7グラム/日:サンマにすると約2匹分)で最も少ないグループ(摂取量36.6グラム/日)の0.73倍と4分の1程度低く、摂取量が多いほど発症率が低い傾向にあり、また小・中型の魚(アジ、イワシなど)や、脂の多い魚(サケ、サンマなど)を多く食べる男性ほど発症リスクが低下し、最も摂取量が多いグループのリスクは0.68倍とさらに低くなっていました。一方、女性においては摂取量と発症リスクに相関関係がみられませんでした。

研究チームでは、魚の脂肪に含まれるEPA・DHAやビタミンDなどが、糖尿病のリスクを低くした可能性が考えられるとみており、一方女性では魚の摂取量によって糖尿病になるリスクに違いが見られなかった理由として、糖尿病発症を抑える栄養素が男女で異なることや、一般に体脂肪の多い女性においては、魚に蓄積された環境汚染物質(水銀など)を体内に取り込みやすく、魚の栄養効果を打ち消した可能性があるとしています。特に青魚の脂肪を効率よく摂取することの有用性が示唆されているので、少し意識して食事に取り入れてみるのも良いかもしれません。

チョコレートに含まれるフラバノールの健康効果
― ただしチョコレートの食べ過ぎには要注意 ―

さて今回は、ココアやダークチョコレート、お茶、ワインなどに含まれているフラバノールの健康効果について、近年発表されている研究結果を中心にご紹介します。

フラバノールは、特に血管系に良いとされ近年注目が集まっており、フラバノールを含むダークチョコレート摂取による健康効果について、続々とその研究結果が発表されています。ドイツの研究チームは、「チョコレートは毎日少量食べるのであれば、心臓病予防と血圧低下に有効である可能性(Eur Heart J)」を示唆しており、アメリカの研究チームも、「チョコレートやココアに含まれるフラバノールには、心臓血管系疾患の改善効果がある(J Am Coll Cardiol)」と論文中で報告、高フラバノールの飲食物からの摂取は、運動などの健康的な習慣と同様の心臓血管系の改善効果が認められた、としています。そして先日発表された英国ケンブリッジ大学による新しい調査では、「チョコレートの摂取により、心臓疾患の発症リスクが3分の1減少する可能性がある(BMJ)」ことが報告されています。調査チームでは、チョコレートが心臓に良いようだということは分かったが、脂肪と糖分の多いことから、食べ過ぎによる悪影響で健康効果や打ち消される可能性も警告しています。チョコレートがなぜ心臓に良いのかは、現時点では医科学的に明らかにはなっていませんが、カカオに含まれるフラバノールが血管を広げるのに役立つと考えられ、注目が集まっています。前述したように、チョコレートには脂肪と糖分が多く含まれているので、運動を併用し、食べ過ぎに注意しつつ一日ひとかけら程度のチョコレートの摂取は健康的かもしれません。

子どもの体型と運動習慣について
― 肥満とやせ形 二極化に ―

9月に入っても暑い日は続くようですが、夏の疲れが出やすい時期にもなりますので、しっかり栄養・睡眠をとって、元気いっぱいで実りの秋をお迎えください。

さて、今回は子どもたちの運動習慣についてです。文部科学省の調査によると、子どもたちの間で“肥満”と“やせ”が増えていて、その中間にあたる標準体重の子どもが減少傾向にあることが明らかとなりました。この背景には、子どもたちが気軽にかつ安全に遊べる場所が減り、からだを動かす機会が減っていることに加え、食生活の乱れ、栄養摂取の偏りが指摘されています。また、テレビやゲーム遊びなど、家で座ったり寝転がったりして過ごす時間は、平日で1日平均5〜6時間にも上る一方で、1週間の総運動時間が1時間未満の小学生男子は10.5%、同女子では24.2%もいることからも、運動量の少ない子どもが増えていることがわかります。

この調査結果によると、運動量の少ない子どもは、運動部や地域のスポーツクラブに属していないことが指摘されていますが、子どもの時から運動習慣を身につけることは、将来の肥満や高血圧など生活習慣病予防になることから、1日1時間程度の運動はしてもらいたいところです。現代社会において、子ども達に運動習慣を身につけさせるには工夫が必要で、周囲の大人が意識して子どもが運動できる環境を整えることが大切であると言われています。

久ヶ原スイミングクラブでは、お子様が楽しみながら体を動かせる水中運動プログラムと、安全に運動できる環境の提供を通して、皆様の健康維持増進の一助になれるよう取り組んでいきたいと思います。

子どもの炭酸飲料の飲み過ぎは血圧上昇を招く

夏休みが始まりました。長いお休み中は、どうしても生活習慣が乱れてしまいがちですが、規則正しい生活を継続しつつ、楽しく有意義なお休みとして下さい。

さて、今回は先日欧州高血圧学会で発表された、“こどもの炭酸飲料の習慣的な飲み過ぎが血圧上昇を招く可能性”についてご紹介いたします。この研究では、7歳〜11歳の児童1113人を対象に、安静後に5分間隔で3回血圧測定を実施するとともに、質問票を用いて炭酸飲料を飲む頻度を調査しました。

炭酸飲料の1日当たりの摂取量別に肥満度:BMI(身長m÷体重kg÷体重kg)をみると、飲まない群は17.7、1杯の群は18.1、2杯の群は18.4、3杯以上の群は18.8と飲む量が増えるに従って肥満度は高まる傾向にあることが明らかとなりました。また、炭酸飲料を1日に3杯以上飲む習慣がある児童は飲まない児童に比べて、収縮期血圧、拡張期血圧、肥満度が有意に高いこともわかりました。さらに、年齢、性別、肥満度の影響を補正して、食習慣と血圧との関係を解析した結果、炭酸飲料の摂取量は、収縮期血圧、拡張期血圧とも有意に相関していることがわかりました。ちなみにこの研究では、スナック菓子を食べる頻度についても調査していますが、スナック菓子を食べる頻度は、血圧およびBMIとの間に有意な関連は認められませんでした(意外ですね)。

以上の結果から、「児童の食習慣の中でも炭酸飲料を飲む習慣は、収縮期血圧および拡張期血圧の上昇に関連している」ことが示唆されました。暑い夏、シュワッとさわやかな飲み口の炭酸飲料は特においしく感じられますが、習慣的な飲み過ぎには気をつけた方が良いかもしれませんね。

熱中症予防と水分補給について

今年の夏は、節電対策として室内温度を上げる傾向にあることから、例年以上に熱中症対策が重要です。熱中症は、炎天下の屋外で発症するものと思われがちですが、実は屋内の日常生活中に発症する例も少なくないことから、屋外・屋内にかかわらず十分な予防対策が必要です。今回は適切な水分補給について考えてみましょう。

人間の体の53%は水分でできていますが、水分の減少率が2%になるとのどがかわき、さらに5%を超えると体温の上昇や頭痛といった症状が出始め、8〜10%でけいれんが起こりやすい、と言われています。適切な水分補給は、私たちの健康を守る上で重要なことは皆さんご存じのとおりですが、汗をかくこの時期の水分補給には、ちょっとした工夫が必要です。我々の体には、約0.9%の塩分を含んだ血液が循環していますが、大量に汗をかいた場合、水だけを飲むと汗で失われた塩分が補給されないため、血液の塩分濃度が薄まってしまいます。この時、体は自動的に体液の濃度を保とうとして、余分な水分を尿として排出してしまう“自発的脱水”が起きやすくなり、体液の量が回復できなくなることから、熱中症対策のマニュアルをまとめている環境省では、「大量に汗をかいた場合、塩分補給も必要で、1リットルの水に対して、1〜2グラムの食塩が目安になる」としています(塩2gの目安は、ちょうどティースプーン半分くらい)。市販のスポーツ飲料には、あらかじめ塩分が含まれているので、長時間運動を続ける場合や大量に汗をかいた後の水分補給には最適ですが、糖分も含まれているため、糖尿病の方が利用する場合には注意が必要(避けた方が良い)です。

適切な水分補給で、暑い夏を元気に過ごしましょう!

二十歳の時の体重を覚えていますか
二十歳時体重と未診断糖尿病との関係

皆様ご自分の二十歳のころの体重を覚えていらっしゃいますか。一般的に二十歳前後で成長が止まることから、肉体を支える骨格のピークは二十歳前後と考えられています。成長期以降に増えた分は“脂肪”と考えられることから、二十歳以降はなるべく体重変動をしない方が望ましいと言われており、二十歳代の体重維持は健康維持の鍵とも考えられています。

先日開かれた日本糖尿病学会において、“二十歳の時から10kg以上体重が増えたことのある(二十歳時体重より10kg以上体重が増えた経験がある)人は、未診断糖尿病のリスクが大幅に上昇する”ことが報告され、男性1万7304人を対象とした調査によって明らかになりました。この報告によれば、二十歳時点の体重と最大体重との差が5kg増加するごとに、未診断糖尿病リスクが39%も有意に上昇することが判明し、最大体重や二十歳時体重などの体重歴は、現在の未診断糖尿病を反映する有用な指標であると結論しています。皆様もご自分の体重歴から糖尿病リスクをチェックしてみてはいかがでしょうか。

早寝早起きの習慣を身につけよう

新年度が始まりました。ご入学、ご入園おめでとうございます。学校生活にも慣れてきた頃でしょうか。さて、今回の話題は「早寝早起き」についてです。子供に早寝早起きを実行させるのは意外に難しく、保護者の方の工夫や努力も大切です。今回は、[早寝早起きがお子様の成長にどのような意味があるのか]をテーマにまとめてみました。

乳幼児期や小学校低学年までに必要な睡眠時間の目安は9-10時間と言われています。成長期の子供は、夜間に熟睡することで、脳細胞や神経の発育が促されますが、同じ10時間でも夜9時頃寝るのと夜更かし後の午前0時頃から寝るのとでは、睡眠の質が違うようです。“子どもの睡眠と発達医療センター”の三池さんによると「十分な量と質の高い睡眠をとることは、子供の心身を育て、能力を発揮することにつながる。そのためには、早寝と早起きがセットで必要」とのこと。また起床後、頭が働き活動できるまでには一定の時間が必要なことを考えると、授業を理解し知識を吸収するという観点からも、早寝早起きは重要な意味を持つことになります。

現代社会の生活環境は夜でも明るいのが当たり前で、寝る時間の直前までテレビやパソコンを見る、ゲームをするのが当たり前になっていますが、これでは脳が覚醒してしまい寝付くことが難しくなります。就寝1時間前には、感覚を過度に刺激しないように(TVは消し親子で話をする、小さいお子様なら本を読んであげるなどふれ合う時間に)すると良いでしょう。早寝早起き、はじめてみませんか?

【食育特集】健康食としての日本型食生活の役割
“野菜を食べよう”

インフルエンザの流行がピークとなり、最新1週間の1医療機関当たりの新規患者数が31.88人と、警報レベルの30人を超えました。国立感染症研究所によると、12月以降はA香港型から新型に流行の中心が移り、昨シーズン同様新型の感染者は子供たちが多いものの、小児から青壮年層まで幅広い世代に広がっているようです。特に今シーズンは20-30代の感染が目立っており、この年代にある働き盛りのサラリーマンや集団活動が多い大学生らが「熱はないから大丈夫」と体調不良を我慢して外出し、感染を広げている可能性も指摘されています。働くパパママたちは、熱があっても頑張って出勤してしまうことも多いと思いますが、インフルエンザ感染例では、実際には高熱が出ないことも珍しくありません。発熱や自覚症状がなくとも油断せず、手洗い励行による感染予防とせきが出る場合はマスクを着用するなど、感染を広げないよう心がけていきましょう。

さて今年は『食育』をテーマに、栄養や健康に関する話題を提供させていただきたいと思います。現代社会では、『いつでも、どこでも食物を簡単に手に入れることができる』とともに、味付けだけを良くした(栄養バランスが偏っている)食べ物があふれているという食生活環境にあります。近年、子供たちへの食育の重要性が叫ばれる一方で、成人においても生活習慣病対策および西洋化された食生活の見直しが急務となっていることから、健康食としての日本食の有用性・日本型食生活の効用を再認識する時期に来ていることは多くの専門家が指摘しています。例えば、欧米人に比較し、軽度の肥満でも糖尿病になりやすいことが日本人の特徴として挙げられますが、このような日本人の特徴を踏まえた健康食の在り方を見直すことが、我々日本人の健康を守る上で重要であると考えられています。

さて、食物繊維の積極的な摂取がメタボ対策にも有用と言われていますが、皆さんは一日にお野菜をどのくらい食べているでしょうか。国民の健康づくり運動である「健康日本21」では、1日350g以上の野菜摂取を目標としています。350gの野菜の量の把握については、次回以降にご説明することとして、“私は足りない分はサプリメントで補っているから大丈夫よ・・・”という声が聞こえてきそうです。ここで、興味深いデータをご紹介しましょう。昨年の国立健康・栄養研究所が発表したデータによると、“親の約15%が子供にサプリメントを与えている”のだそうです。これが究極の現代食の在り方なのだとすれば、あまり健全な姿ではないように思いますが、いかがでしょうか。

仕事を持つ女性が増えたこと、冷凍食品、レトルト食品、お惣菜の増加など、様々な因子を重なって家庭での調理が減ってきている、ということはよく耳にします。実際に、仕事が終わってから帰宅後に食事の準備を一からするのは、とっても大変なこと(だと私は感じています)だと思います。もしかしたら、買ってきたお弁当だけで食事を済ませる、そんな日もあるかもしれません。そこで食育作戦(?!)初めの一歩として、すべてを手作りにしなくても、お弁当、お惣菜などの中食と手作りのものを組み合わせてみることを提案します。例えば、切っただけの野菜をたっぷりいれたスープや味噌汁を一品加える、レタスをざく切りにして、プチトマトを加えた簡単サラダを一品追加するなど、ほんの少しの労力をかけると(このほんの少しの労力がとっても大変なのですが)、お食事のバランスが良くなるとともに、お子様の味覚や豊かな食経験につながるのではないかと思います。

次回に続きます。

(【参考資料】インフルエンザについて:2月4日読売新聞記事一部抜粋)

手洗いの徹底をしましょう
ノロウィルスによる感染性胃腸炎が流行しています

今年も残すところわずかとなりました。皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。

さて、毎年この時期に流行するインフルエンザや感染性胃腸炎が今シーズンも流行しているようです。手洗いの徹底や、せきやくしゃみが出たらマスクをするなどして感染を広げない“せきエチケット”の励行のほか、症状が出たらすぐに医療機関に受診するようにしましょう。

また、嘔吐や下痢を繰り返す感染性胃腸炎の患者数も急増中で、そのほとんどはノロウィルスが原因とみられています(7歳以下の患者がその70%以上を占める)。ノロウィルスは、主に患者の嘔吐物や便を介して感染し、感染力が非常に強いことが特徴です。感染者の便には1グラム中1億個以上の大量のノロウィルスが含まれていますが、100個以下のごく少量でも口から体内に入ると感染し、乳幼児や高齢者は症状が重くなることがあるので、嘔吐物や便などを処理する際は、周囲に広がらないように注意することが大切です。

ノロウィルスは感染してから1-2日の潜伏期間を経て、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの症状がでます。症状が続くのは数時間から数日と比較的短いですが、特効薬がなく、水分補給が必須となります。水+やスポーツドリンクなどで水分補給をしましょう。

中には感染しても自覚症状がほとんどない場合もあり、感染に気がつかない場合も多いようですが、症状が出なくても感染後1週間くらいはウィルスを排出します。トイレはノロウィルスに汚染される可能性が高い場所なので、便器、ドアノブや水洗レバーなど手の触れるところは、こまめに洗浄、消毒するようにしましょう。特に調理をする方は感染の有無にかかわらず、必ず調理前に手洗いをする、トイレの後や食事の前にはせっけんと流水で十分に手を洗う、日頃からの習慣が重要です。

感染者が出た場合・・・嘔吐物等を処理する際は窓を開け、マスク、使い捨て手袋、エプロンを着用した上で、新聞やペーパータオルなどで処理物を集め、ポリ袋に密閉して捨てましょう。次亜鉛素酸ナトリウムが成分の漂白剤(0.1%に薄める)による消毒が有効なので、布などに染み込ませて拭き取りましょう。ウィルスはかなり広範囲に飛び散っているので、消毒する範囲も広め(嘔吐したところを中心に半径2メートルくらい)にとるようにしましょう。

適切な処理は感染を広げないための重要な予防対策の一つです。

☆症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう☆

「米飯多食で女性の糖尿病リスク増加」
1日4杯→1杯の1.81倍

寒さも本格的になってまいりました。今年も残すところあとわずかとなりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。すでに今年はインフルエンザ早期流行の兆しをみせ、例年に比べ流行が早まる可能性が高まっているようです。全体としてはまだ低いレベルですが、流行が起きているとみられる地域もあり、流行が早く始まる可能性があることから、ワクチン接種を予定している人は早めに受けてほしいと国立感染症研究所では呼びかけています。また、手洗いや、せきやくしゃみが出たらマスクをするなどして感染を広げない“せきエチケット”の励行のほか、症状が出たらすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

さて、今回の話題は「米飯(ご飯)」の話です。米離れが進んでいると言われて久しい昨今ですが、皆様はお米を一日にお茶碗何杯くらい召し上がりますか。中には一日のうち一回も「米版(ご飯)」を食べない人もあるかもしれません。。。

今回は、日本人の主食であるご飯にまつわる研究結果についてのご紹介で、米飯を多く食べる習慣がある女性は、あまり食べない女性に比べて糖尿病になるリスクが高いことが厚労省研究班による日本人対象の大規模調査で明らかになりました。炭水化物を多量に摂取すると発症率が高まることは知られていますが、日本人の米飯と糖尿病発症との関連を大規模に調べたのは今回が初めてです。

調査は、全国8県に住む45〜74歳の健康な男女約計約6万人を対象に、1990年代初めから5年間にわたり追跡し、このうち1103人(男性625人、女性478人)が糖尿病を発症しました。

摂取カロリーや栄養バランスの個人差を調整して、米飯だけの影響を分析した結果、白米だけの米飯を1日あたり3杯(420g)食べる女性は、同1杯強(165g)の女性に比べ、糖尿病を発症する危険性が1.67倍に、4杯(560g)だと1.81倍高かったことがわかりました。また、麦などの雑穀が混ざった米飯を食べている場合の危険性はやや低くなったものの、傾向は変わりませんでした。

男性の場合、米飯の摂取量による明確な差は見られませんでしたが、1日当たり1時間以上の筋肉労働や運動をしていない場合は、女性同様に発症の危険性が高まる傾向がみられました。炭水化物をたくさん食べると糖尿病のリスクが高まるとの報告例は海外でもありますが、今回の研究ではパンや麺類では関連が見られませんでした。

ご飯を多く摂る女性の生活習慣が糖尿病を引き起こしている可能性があることから、今回の研究結果からは、お米が糖尿病発症の原因になっている、とは断定できません。米飯は、食後に血糖値が上がりやすい食品ではありますが、食事は「ご飯」だけではないので、副菜に食物繊維(野菜など)を摂取して血糖値の上昇を抑える工夫も必要です。ご飯を含めた食習慣全体のバランスを良くすることと、運動習慣を心がけることで糖尿病発症リスクを下げることができます。

米飯を中心とした和食献立は、食事全体の脂質割合が低く“脱メタボ向き”であるのに対し、パンやパスタなどは「油脂依存型」の主食と言えることから、ご飯の長所を認識することも重要ですね。ご飯を多めに食べる人の場合も、野菜を積極的にとり食事全体のバランスに配慮し、運動習慣を身につけて“脱メタボ・糖尿病予防”を心がけましょう。

谷内 洋子